経済学と行動心理学?ノーベル経済学賞に学ぶ 2

201710-2-1

前回の記事では、行動経済学について従来の経済学と比較しながらご紹介し、身近な例を5つ取り上げました。今回は少し踏み込んで、行動経済学をマーケティングに活かす際の考え方をご説明します。マーケティングオートメーションにどう生かせるか、考えてみましょう。

 

 

 

行動経済学からマーケティングを考える

 

マーケティングを「企業と顧客の関係をよくするための活動全般」とすると、「人の経済行動を、心理学に基づいて考える」ことを根底におく「行動経済学」を取り入れることはとても重要です。

では、どのように活用すれば良いのでしょうか。慶應義塾大学経済学部の大垣教授によると「行動経済学から見るマーケティングアプローチ」は、企業と顧客の共同体を作るための3つのアプローチポイントがあるのだそうです。

 

ステップ1:自己効力感をもたせる

顧客に、「私がこの商品を買ったことで〇〇に貢献している」ということを実感させること。例えば、商品の売上の一部を寄付することや、環境に優しい商品づくりをすることなどが効果的と考えられます。

購買行動によって変化したものをHPなどで公開することで、「自分が違いをもたらすことができる」という「自己効力感」を顧客に持たせることができます。

 

ステップ2:規範が生まれる

ステップ1が多くの人に広まると、「私がこの商品を購入していることは良いことだ」「多くの人がそう考えている」という、行動を肯定する規範が生まれます。

利己的な人ばかりでは、共同体は成り立ちません。「みんなは何をしていて、何をよいと思っているのか」多くの人にこのような規範を持たせることが重要だという考え方です。

 

ステップ3:幸福感を与える

多くの人は善い行いをすることで幸福と感じ、充実感をも得ることができます。

自社の商品を購入することで顧客が幸福感を得られる仕組みを作ることができれば、マーケティングは成功といえるでしょう。

 

マーケティングの成功パターンは企業によって違いますので、必ずしもすべてに当てはまる訳ではありませんが、企業は、顧客が貢献を実感できるよう、行動経済学的にアプローチしていくことが重要だということです。

 

 

単なる消費ではなく、消費することで得られる満足感が重要

 

客観的に見ても上記の様な、自己効力感をもたせ→規範を生み→幸福感を与える という取り組みにより成功している例は少なくありません。

例えば、日本コカ・コーラ株式会社が発売している「い・ろ・は・す」というミネラルウォーターがあります。累計20億本以上を売り上げる人気商品です。

CMなどの広告で環境への配慮をうたい、実際に「製品に使った量と同じ量の水を自然に還元することを目標」にしています。また、極端に薄く絞れるほど柔らかいボトルは、利便性だけでなく環境への優しさをユーザーが簡単に連想できることで、自然環境への「自己効力感」に繋がっていると言えます。

環境への配慮やそれによる結果は、Webサイトでも積極的に情報を公開しており、「この商品を購入していることは良いことだ」という心理を顧客に与えています。「自分がこの商品を選ぶことで環境がよくなる」ということを知っていれば、数種類のミネラルウォーターが並んでいる中で「い・ろ・は・す」を選ぶことは、ささやかな「幸福感」を生むといえるでしょう。

 

また、募金活動も同様の心理が考えられます。募金活動は自分のための消費ではありませんが、100%他人の為かというとそうではなく、「募金をする」という行為が、募金する側にも幸福感や充実感を与える行為といえます。

これらのことを考えると、人の経済行動は単なる消費だけではなく、それによって得られる満足感が重要であるのは間違いないようです。

 

 

行動経済学を身近な例で考える

 

前回は、以下の「効果」をご紹介しました。

・フレーミング効果

・おとり効果

・アンカリング効果

・ハーティング効果

・現状維持バイアス     の5つ。

 

今回もさらに5つの例をご紹介します。

 

損失回避

人は利益を得ることよりも損失を恐れるという心理現象

〈例〉

A:何の苦労も無く10万円もらえる

B:20万円もらえる可能性が50%

多くの場合、人はBの「20万円もらえない方の50%」を恐れて,小額でもAを選択する。

 

確実性効果

確率が0%や100%など、確実性の高いものに価値を感じる心理効果

〈例〉

A: 100%の確立で15万円を確実にもらえるクジ

B :10%の確率で30万円もらえるクジ

低確率で多くの利益を狙うより、確実に利益を得られる選択肢を選ぶ傾向がある。

 

ギャンブラーの誤謬(ごびゅう=過ち)

自分の感覚のみで、合理的な根拠がないにも関わらず、確率論において誤った予測をする心理現象

〈例〉

コイン投げで、「表が5回連続で出た」場合、「そろそろ次は裏だろう」と思ってしまうこと。確率は表も裏も常に1/2で、連続してどちらかが出た場合も変動しないが、確率論に逆らい自分の感覚を信じてしまう。

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メンタルアカウンティング

自分のなかに小さなフレームを作り、その中で意思決定をする心理現象

〈例〉

普段は「1杯500円のジュース」に躊躇してしまう人が、「旅行先のホテルのジュース」が1,000円でも注文してしまう。

この場合、「旅行」という自分が作ったフレームの中で意思決定をしており、旅行の総額に対して1,000円は安く感じる。

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現在志向バイアス

未来の利益よりも目先の利益を優先してしまう心理

〈例〉

A:今もらえる10万円

B:1年後にもらえる15万円

では、Aを選ぶ人が多い。

 

 

自分の行動に当てはめながら、「行動経済学」を身近に感じて下さいね。

人の「行動」や「心理変化」に伴う購買行動は、マーケティングオートメーションが目標とするところです。ユーザーにどのような心理状態の変化を与えていけば、ナーチャリングにつながっていくのか。マーケターの腕の見せ所かもしれません。

 

 

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